WHAT .

ISHIKI RIVER MUSEUM.

石木川ミュージアムについて

2021年の1月中旬、今後の活動方針に悩んでいた私に鶴の一声。「団結小屋の手前の物置になっている部屋を穂澄の活動拠点に使わせてもらったら?」と打診してくれたのが母でした。私が描くイラストは決して大きなサイズとは言えず、集中してイラストを増産し、苦手な展示にも参加を試みましたが、その後たどり着いた答えは「自分の居場所から発信したい」という思いでした。

 長崎県には約半世紀前から石木ダム建設問題が存在します。その水没予定地川原(こうばる)地区には、本体部分のコンクリートの壁が立ちはだかる場所に40年以上前から「団結小屋」と呼ばれる建物が建っています。1982年当時は団結小屋では24時間体制で監視が行われていたそうです。その後、小康状態に入ってからは地元のおばあちゃんたちが昼間に集まってお茶をするサロンのような場所になっていました。私の祖母も団結小屋に通うメンバーの1人でしたが、10年前に他界。その後も次々とおばあちゃんは亡くなっていき、とうとう現在は松本マツさん95歳たった1人となってしまいました。世代交代を迎えている団結小屋。次の団塊の世代のおばちゃんたちは日々のダム関連工事の抗議行動で精一杯です。
 そうだ!ついでに私が引き継げばいいじゃない!そんな玉虫色のアイデアに、地元の皆さん納得してくれるかしら?と少々不安だった私。そこは両親に間に入って交渉してもらい、団結小屋を間借りできることになりました。ミュージアム兼アトリエとして正式にオープンの報告ができたのは11月でした。1番思い入れのある作業は、友人に手伝ってもらったミュージアムの壁のペンキ塗り!団結小屋の外観は1980年代の労働運動を思わせ実におどろおどろしい。そこで、外観と内装のギャップを出したくて、ミュージアムの壁はピンク色にしました。これが意外にも私の作品を展示した時にハレーションを起こさず素敵な空間に仕上がりました。ミュージアムを訪れる人もポップさに驚きます。いきなり抗議行動の現場にアクセスすることは敷居が高いので、まずはお茶をしに石木川ミュージアムを訪れて欲しいです。偶然知らない人が訪ねて来た時が1番嬉しいですね。少しずつ扉が開いていく感覚です。 
 報道関係の方からこの状況を写真や動画の記録として残しておくといいよと言われますが、それは違うと思っています。それは私の仕事ではありません。私は、今まさに呼吸を続ける川原の世界を描いています。私の使命は、これから先も続く里山の生活に光を当てポジティブに描き出すことで、ダムの時代を終わらせることです。 
  
                                  2022年5月


プロフィール 

こうばるほずみ 

1982年長崎県石木ダム水没予定地川原地区生まれ。現在も地元で暮らすイラストレーター。石木川に特化したイラストを描く。18歳頃美大受験のストレスと進路の不安から双極性感情障害を発症。不安定な病状の中、2010年に石木ダム付け替え道路工事着工を機に活動を開始。イラストを中心とした発信を通して自ら居場所を作り、病気も少しずつ安定期へ。厳しい状況の中、充実した日々を送っている。